滋養に富む一冊
昨日付で、とある本から何気なく記述を引用させていただいたが、引用したからにはその文献をきちんと紹介するのがスジであろう。
『遠野馬物語』は、フリーのカメラマンとして馬と人が織り成す馬文化をテーマに、世界各地を旅する著者が、ライフワークでもある遠野の馬と人について綴ったフォトエッセー。馬と人とか生活レベルで結びついた遠野という土地の、ファンタジックな風土記である。
東京在住のカメラマンが、縁もゆかりもなかった遠野に魅せられた経緯は本書に詳しいが、著者と遠野という土地との出会いがなければ、こうした書籍はもちろん、記録的にも貴重な数多の写真たちがこの世に残されなかったことになる。そう考えた時、カメラマンという立場の人間に与えられた使命の重さを感じた。
競走馬の場合、未勝利に終わろうとも競走記録は残るし、たとえ未出走のまま競馬の舞台に立つことはなくとも血統登録は残る。ただ、それはあくまでも管理上の記録に過ぎない。彼らがこの世に生きた証と言うには、あまりにも無機的に過ぎる。だから彼らの写真を撮り続け、彼らが地上に生きた証を残そうと、多くのカメラマンたちは風雪にさらされながら今日もファインダー越しに馬を追い続けているのである。
『遠野馬物語』に掲載された馬たちの写真をつぶさに眺め、その一頭一頭の瞳を見ながら、そんな思いを強くした。もちろん馬文化の教材としても申し分ない。滋養に富んだ一冊と言えよう。
『遠野馬物語』 高草操著・里文出版(1680円)
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