雪に思うこと
「今日の川崎は中止だそうですよ」
正午頃に川崎競馬中止の一報を受けると、すぐさま電話をかけて、そう伝えた。
電話の相手はプレシャスジェムズの会員氏。ちょうど家を出たところだという。横なぐりの雪が降り続いているというのに、スーツに革靴という格好で競馬場に向かおうとしていたのは、もちろん口取りに備えてのことである。
逃げ馬に有利な不良馬場に加え、鞍上は武豊騎手にスイッチ。クラーベセクレタやミラクルレジェンドといった有力馬が揃って休養明けであることも加味すれば、勝つチャンスはゼロではあるまい。仕事も特別に休みをもらった。あとは現地でプレシャスジェムズが逃げまくるのを固唾を飲んで見守るだけ。……だったのに、この雪は痛恨である。
「そうですか……。う~ん……、残念ですけど。仕方ありませんね。知らせていただいてありがとうございます」
相手はそう言って電話を切った。私自身もやるせない気持ちになって、せめて代替開催があってくれればと願ったのだが、それもないという。
ダートグレードレースが中止になった初めてのケースは、2002年7月10日に同じ川崎で行われる予定だったスパーキングレディーカップ。台風6号の接近により、今日と同じようにこの日の開催全レースが中止となった。が、この時は、スパーキングレディーカップだけが、翌日に出馬再投票の上で実施されており、ジーナフォンテンが優勝を果たしている。
ところが、今回のエンプレス杯は「取りやめ」だという。昨年の震災で、一度は「中止」と発表されたダイオライト記念が次開催で実施された例があるが、エンプレス杯を次の川崎開催で実施するとなれば、同じ牝馬限定重賞の船橋・マリーンカップの翌週ということになってしまう。そのマリーンカップにしても、震災の影響で昨年は中止。今回のエンプレス杯と同じように、延期とするのに適した日程が無いという理由から、代替開催は行われなかった。密集気味の感がある牝馬限定ダートグレードは、別開催に振りわけにくい側面を持つ。
出れば勝ち負け必至と思われたクラーベセクレタの会員氏も、順延ではなく中止という決定に落胆の色を隠せないでいた。ぶっちゃけ、賞金をアテにしていたという。勝てば会員ひとりあたり60万。その賞金が雪のように消えてしまった。「60万をなくした」と思えば、平常心ではいられまい。それでなくとも、昨年のジャパンダートダービー3着の賞金返上の一件もある。
そんなことを考えつつ、窓の外の雪を身ながら午後を過ごしていたら、同じサンデーサラブレッドクラブのレーヴディソール引退の報が届いた。チューリップ賞を圧勝し、桜花賞確実と言われてからちょうど1年。こちらの会員氏も、天国を見たり地獄を見たりたいへんだったことだろう。クラーベセクレタやレーヴディソールの会員でなくて良かった……とまではさすがに思わないが、走る馬の会員というのも、それなりに苦労があるのかもしれませんね。それはそれで羨ましいのだけど。

































































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