驟雨に煙るダービー・デー
正午を過ぎたあたりから、1コーナーの遥か向こう、聖蹟桜ヶ丘あたりの上空に、不気味なほど黒い雲がかかっているのが気になりはじめた。「あの雲はこっちにくるのかな?」私を馬主席に招き入れてくれた知人が尋ねる。
今日ここまでの東京競馬場は、薄日も差す穏やかな陽気。ウイナーズサークルではダービー当日恒例のダービー出場騎手紹介が華々しく行われており、内田博幸騎手が派手なバック宙を決めると、場内から大歓声があがった。
下でレースを撮っていた時分には、天候や雲の流れには人一倍神経を遣っていた方である。抜けるような青空が広がっていても、ほんの一片の雲が太陽を隠せば、撮影条件は大きく変わる。いま聖蹟桜ヶ丘の上空にある黒い雲が、1時間もしないうちに東京競馬場に到達するのは明らかだった。
「雲は多摩川の流れに沿って西から東へと流れます。これは間違いなく降ってきますね」
そう言って私は深いため息をついた。年に一度、ダービーだけは競馬場に行くという人を私は大勢知っている。そういう方のためにも、せめてダービーだけは好天になって欲しいと願うのだが、6レースが始まる頃には雨が落ちはじめ、7レースになると絶望的な豪雨が容赦なく馬場を叩いた。
向こう正面はおろか、左右の両コーナーも霞んでしまうほどの雨量である。馬場状態はついに「不良」に変わった。実に40年ぶりとなる不良馬場のダービーが始まろうとしている。
むらさき賞の発走前に、いそいそとダービーのパドックへと降りる。早めに来たつもりだが、それでも屋根の下は満員御礼。むろんパドックでの傘は御法度である。もはや濡れるに任せるほかはない。
たまたま隣に立った社台スタリオンの方と挨拶を交わす。「残念な雨ですね」と言ったら、「でも条件はみんな一緒でしょ」と競馬目線の言葉を返された。ダービーのパドックで勝負に挑む関係者にかける言葉としては、あまりに軽率だった。反省。







































































あれから14年が経った今年の東京湾カップは、ブルーラッドが人気のサプライズゲストをゴール寸前差し切って優勝した。高々と右手を挙げたのは御神本訓史騎手。













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