ダーレージャパンは無敵か?
昨日の続き。
”ダーレージャパン”の背後に控えているのは、言わずとしれたアラブ首長国連邦・ドバイのシェイク・ムハンマド殿下と競走馬管理組織”ゴドルフィン”である。有り余るオイルマネーを惜しみなく馬に投資し、ヨーロッパの主要レースを席巻していることは今さら説明の必要はないだろう。
ただ、潤沢な資金を湯水の如く注ぎ入れても、アメリカでのオペレーションは必ずしも成功しているとは言えない。ライヴァルであるクールモアグループが、ケンタッキーダービーを始めとしたアメリカの主要レースで結果を残していることを考えると、ここにゴドルフィンのある種の限界が見え隠れする。
日本でもまったく同じことで、たとえ南関東レベルでも勝とうと思ったらドバイのトップクラスの馬を連れてこなくては勝てない。が、日本にゴドルフィンのトップクラスがやって来ることはあり得ない。彼らはトップクラスの馬は欧州で使うと決めている。「日本の南関東でならこのレベルで結果を出せるはず」というのが本国(ドバイ)の方針なのだろう。しかし、ヨーロッパのように明らかな成果が得られているかというと、決してそうとは言えない。南関東レベルでさえそうなのだから、スプリングSでの大敗も推して知るべきか。
生産者の中には、「ドバイ」と聞いただけで縮み上がる人が多数派らしい。もちろん金の話を聞けば、私も縮み上がる小市民のひとりだが、冷静に費用対効果を検証してみると実際のところそれほどでもないような気がする。
「ヨーロッパの競馬を席巻している」とは言っても、使っている金の規模を考えれば、逆に「その程度か」という思いが湧いてこないだろうか。なんといっても、世界の主要マーケットで1頭数十億の幼駒をバンバン買い漁っていながら、そういった高額購入馬が走ったという話はほとんど聞かない。これはよく指摘されることだが、デイラミにせよ、ドバイミレニアムにせよ、エレクトロキューショニストにせよ、『ゴドルフィンのエース』として活躍した馬は、ある程度の実績を積み上げたところで、トレードによりゴドルフィンに移籍した馬ばかりである。もちろんユートピアもその1頭に数えられる。
TVや雑誌で取り上げられる際の”ゴドルフィン”のイメージが、あまりに「世界一の馬主で世界一のお金持ち」という切り口に過ぎるので、生産者さえもが「ゴドルフィンやダーレーに我々が適うはずなどない」と白旗を揚げているのかもしれない。しかし、フリオーソがスプリングSで勝ち馬に2秒8もの大差をつけられ、一週間後のマーチSに出走したダーレーのエースとも言うべきシーチャリオットが、やはり4秒以上もの大差で敗れたシーンを目の当たりにすると、「仮にダーレーがJRAの馬主資格を取得したところで、どれほど勝てるのか?」ということに対して、もう少し現実的な見積もりがあっても良いように思う。
過去もそして現在も、優れたサラブレッドというものは圧倒的な経済力の元に集結するものであり、そうした経済力がハイレベルな活躍の舞台と優れた繁殖相手をもたらすことによって、300年の永きにわたりサラブレッドの反映を下支えしてきた。しかしもちろん、実際の競馬シーンではそれほど構造は単純ではない。つい先日の皐月賞でも、わずか100万で取引されたサンツェッペリンが、セレクトセールで1億円の値を付けたフサイチホウオーに先着したばかりである。
アドマイヤムーンが先日のドバイ・デューティーフリーを勝ったことは、日本国内では一様に好意的に扱われているが、一方でこの快挙は『非国内居住外国人馬主問題』への外圧を強める方向に作用している。JRAの高橋理事長は、「パートⅠ国」昇格時の会見において「世界の競馬共同体の一員として責任を果たす」と明言した。今回のパートⅠ昇格については2年間の経過期間を経た上で「必要な見直しを行う」とされており、『非国内居住外国人馬主問題』について一定の進展が見られなければ、パートⅠ国の立場はわずか2年で危ういものとなる。
ダーレージャパンのJRA馬主登録は早晩認められる可能性が高い。また、認められたところで、今すぐにJRA重賞で通用する力は兼ね備えていないのは、フリオーソやシーチャリオットがGⅢレベルで惨敗を繰り広げていることからも明らかだ。であれば、いたずらに負けを先延ばしする戦術よりも、ダーレージャパンと組んで日高の生産者も利を得るような戦術への転換も準備しておいた方が賢明だと思う。例えば、日高は笠松競馬の存続のために資金面での援助を強いられているが、このような地方競馬再興の切り札としてダーレージャパンの協力を得られれば日高全体でもメリットがあるはずである。
こんなことを書くと、また「部外者に何が分かる!」とかいうコメントが届きそうだが、私が地方で所有馬を走らせ、また繁殖牝馬を共同所有しているのは、少しでも多くの馬主や生産者の気持ちを理解しようとしているからだ。私はダーレーに頼り切る船橋競馬場の姿勢に危機感を募らせる人間であるが、だからといって頼れるものを断って、座して死を待つような姿勢を潔しとも感じない。本質的な問題を置き去りにしたまま、本編とは無関係なところで争って、互いにただ消耗している今の様は、ただただ不毛だと感じているのである。
羽田盃で人気を集めたフリオーソは僅差とはいえ競り負ける格好で3着に敗れた。ダート2歳チャンプの苦悩は続いているようである。
| 固定リンク
« フリオーソの羽田盃 | トップページ | 雨の撮影 »

コメント