馬は飛んだけどレースは普通
クリスマスでござる!
ということは夕べはクリスマスイブだったんですよね。なのに私と来たら、24時近くまで神田の鮨屋で競馬の話に明け暮れて、ボロボロになっての帰宅。サンタが見てたらバチがあたりそうだ。あるいは「有馬記念だから」と許してくれるだろうか。
だいたいが、昨日の昼飯なんてサンドイッチひとつだけ! こうなるとクリスマスもへったくれもあったモンじゃない。クリスマスイブなので、いちおうチキンカツサンドを選んでみたのだが、逆に哀愁を奏でる結果に。
有馬記念終了後、ノーザンファーム関係者に挨拶&世間話をしていたら、彼が「ディープ云々を抜きにして、レースだけを純粋に見たら、案外つまらないレースだったね」と漏らした。自らの生産馬が”7冠馬”の栄冠を勝ち取って浮かれ気分全開かと思いきや、さすがリーディングブリーダーを突っ走る牧場で働くだけあってレースを見る目は冷静だ。
で、なんだかんだでディープインパクトの引退式が終わり、これにて今年のJRA開催はすべて終了。急いで荷物を片づけて、調教師やら厩務員やら馬主さんらへの挨拶回りに走ると、某作家の方から「勝ったのがディープでなかったら、今日みたいなレースは二度と見たくない」とお叱りを受けた。そんなこと私に言われても困る。しかし、全く別の立場の二人の見た目が期せずして同じ結論に辿り着いていることに興味を覚えた。
そういえば、とある女性カメラマンの方が、レース直後に「なんだか今日は全然冷静でいられる」とこぼしていたことを思い出す。確かに去年のレース後は大騒ぎだった。「負けたぞ!」と色めく記者、カメラマン、調教師、馬主をよそにスタンドの観客は水を打ったようにシーンとしており、そのコントラストは実に鮮明だった。
今年はまるで逆、歓喜に沸くスタンドを尻目に、関係者は淡々と現場を行き来した。想定されたレース内容で、想定された結果。前出の二人が言う通りレースそのものは平凡。渾身の先行策に打って出た昨年のハーツクライのようなサプライズも、今回は見ることができなかった。
今年の有馬が平凡なレースに終わったことについてディープインパクトに非はない。すべての原因は、ディープインパクトを除く他の出走馬13頭にある。「渾身の逃げを打つ」と宣言していたアドマイヤメインのペースは、1000m通過が59.5の平均ペース。自ら動いてディープに脚を使わせようとするような馬もおらず、結果、ディープインパクトだけが思い通りの競馬をすることになった。
そもそもディープ以外の陣営の多くは、ハナから勝負を放棄しているフシがありありだった。「ディープと一緒に競馬ができただけで幸せ」というコメントに代表されるように、誰一人本気でディープを負かしに行かなかったことが、今年の有馬の最大のポイントだろう。
1988年の秋の天皇賞を思い出す。オグリキャップに勝つために、誰もが予想しなかった逃げの一手に打って出たタマモクロス。あのような『肉を斬らせて骨を断つ』競馬に、全身が震えるような思いを味わうことは、もはやできないのだろう。有馬記念の入場者大幅減の背景に、こうしたファンの思いがあったとしても不思議ではない。
33.8秒の上がりを繰り出したディープインパクトについて言えば、もちろん期待通りの競馬。ただし、勝ち時計2分31秒9は、昨年の走破時計とほぼ同じで、実は今年のディープインパクトのレースは、時計的には去年と全く同じパフォーマンスだったということになる。
そういう視点からなのだろう。ハーツクライ500万に対し、ディープ1200万とされる初年度種付け料に「俄然ハーツ!」と唸った生産者がいた。なるほど。そういうところまで考えて見ている人もいるものだ。
今日は、自宅近くの『寿し長』でゆるゆると鮨をつまむ。クリスマスで、しかも通常なら定休日の月曜だからガラガラだろうとタカをくくってたら、案外混んでいてビックリ。カウンターの隣に座った男性客が、「有馬記念で50万損した!」と叫んでいた。一体どういう馬券に50万も突っ込んだのだろうか? 聞いてみようと勇気を振り絞ったのだが、顔も名前も知らぬ客相手に、さすがにそこまではできなかった。残念。
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