2008年5月16日 (金)

ゴールから遠く離れて

Photoひとくちに「競馬の写真」と言っても用途・目的は様々あるが、一般的には背景にゴール板が写し込まれたカットでかつ勝ち馬の脚の形が美しいものが求められる。さらに選別を極めれば「脚の並び」よりも「ゴール板の有無」の方が優先されるケースが多い。「なんでこんなみっともない瞬間の写真をわざわざ使うんだよ!」と訝ることもしばしばだが、「ゴール前写真」と銘打つなら、ゴール板は必須アイテムなのかもしれない。ともあれクライアントがゴール板にこだわる以上は、現場のカメラマンもゴール板に執着せざるを得なくなってくる。

ゴール板と勝ち馬とを一緒に写し込むには、ゴール板に近いところで撮る必要があるのは言うまでもない。

だが、そのようなポジションは限られており、勢い場所取りは熾烈を極める。特にGⅠレース開催日などは普段競馬場に来ないようなTVクルーや一般雑誌のカメラマンでごった返すので皆殺気立っており、場所取りだけでグッタリ疲れてしまうこともある。そんなことに神経を使うのはどう考えても時間と労力の無駄なので、最近ではこの“場所取り祭り”に参加することは控えるようにしていたが、昨日付けで書いたような事情から今後しばらくは”祭り”に参加する必要すら無くなってしまったことになる。

ちなみに、以前はこんなことはなかった。

基本的に場所取りは早い者勝ちで、本人の努力次第で良いポジションが確保できたのはそう遠い過去の話ではない。私の記憶違いでなければ、マヤノトップガンが勝った有馬記念はまだそういうルールだった。ただし、明文化されたルールが無いだけに、最低限のマナーや“暗黙の了解”はしっかりと守られていたように思う。

ゴール板の真正面から5人分はJRA専属カメラマンのエリアで、ココはGallopの●●さん、あそこはブックの■■さん、と言った具合。マナーを知らぬ新参者がいれば、ちゃんと注意する親方格のカメラマンがいたし、見知ったカメラマンが何かの事情で遅れてくれば、誰かが号令をかけて5センチずつでも詰め合ってポジションを譲ってあげたものである。

ところが今はJRAによってカメラマン一人一人が細かく格付けされ、それぞれの撮影場所は原則この“格”によって配分されている。「格差社会」特有の現象なのか、カメラマン同士で場所を融通し合うという光景もあまり見かけなくなったし、マナーを知らぬカメラマンを注意する親方も今はいない。マナー違反を咎めるならば、その旨をJRAの職員に告げてコトを荒立てる必要がある。

ちなみに今週までの私自身の格は”最低ランク”だった。そして来週からは”ランク外”となる。

私自身はゴール板に命をかけるほどの仕事をしていたわけではないので、特に昨今のGⅠレースでは、勝負が決したあとの人馬を撮ってばかりだった。首尾よくゴール近くのポジションをゲットした“格上”のカメラマンが、わざわざやって来て、「この位置ですと、今日は(勝利騎手の)ガッツポーズ狙いですか?」なんてイヤミを言ってくるのにもすっかり慣れていた。

Mejar_3でも、そういう  たとえばガッツポーズ狙いの  側面があることはこちらとしても否定しない。勝負は終わっても、馬はまだ走り続けているのだし、勝利騎手の興奮はゴール板を過ぎた後にやってくる。その日いちばんの感動は、ゴールの瞬間ではない他の一瞬に訪れないとも限らないわけだ。極端な話、負けた馬が主役のレースだってある。だらこそ「どこで撮るか」ということにこだわるよりは、「何を撮るか」という原則的な事柄に神経を集中させるべきなのだろう。

(明日付に続く)

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2008年5月15日 (木)

一喜千憂

大手町で「競馬とは無関係な仕事」を終えたのが20時ちょい前。丸ノ内線、山手線、モノレールと乗り継いでも東京プリンセス賞には間に合うはずもなく、例によってこの「競馬とは無関係な仕事」を呪うハメに。

しかし、実はひとつ嬉しいニュースがある。

この「競馬とは無関係な仕事」に、私はこの一年の間、ことあるごとに苦しめられてきたわけだが、実はその仕事が今週末をもって終了するのである。「ひと区切り」とか「中断」ではなく、完全なる「終了」。もう二度と関わることはない。週末にカンヅメにされることもなければ、土曜のたびに名古屋に行かされることもない。膨大な量のメモ起こしともオサラバだ。

残された”最後のおつとめ”のため、今週末の京王杯SCとヴィクトリアマイルに行けないのは残念至極だが、肝心のオークスとダービーには間に合えば御の字。そう考えれば、東京プリンセス賞に行けないことなど些細な問題と納得もできる。

しかし、そんなささやかな私の喜びを一瞬で掻き消さんばかりの、超弩級の激しい災厄が突如この私を襲った。

来週からJRA競馬場での撮影ができなくなってしまったのである!

いや、スケジュール的には問題ない。なにせ私の手足を縛りつけていた「競馬とは無関係な仕事」は葬り去られたのだ。

じゃあ何か? 実際のところJRAで撮る「仕事」がなくなってしまったのだ。いや、「なくなってしまった」というよりは「取り上げられてしまった」と書いた方が正しい。

理由を書けば長くなるが、大きいところでは今年に入ってからほとんどJRA競馬場に行けてなかったことが大きく影響している。このブログを読み返すとよく分かるが、今年撮った重賞レースがスプリングSと皐月賞だけというザマでは…ね。私がクライアントなら、こんなヤツに仕事頼まないもんなぁ。

それにしても、競馬場に行けるようになったまさにその週から、逆に競馬場に行く理由がなくなってしまうなんて出来過ぎた話にもほどがある。実は今までにも「JRAで撮れなくなる」的危機は何度か訪れたことがあるのだが、いずれも手続き上の問題で、膨大な量の手順を丹念に辿って、どうにか復旧にこぎつけることができた。が、しかし、今回の一件はマザーボードからイカれてしまっている感じ。「復旧」ではなく「買い換え」を考えてなくてはならない。

何より時期が時期である。オークスやダービーの直前だけに、さすがの私もすっかり力が抜けてしまった。この一年というもの、ただひたすら競馬とは無関係な仕事に追い回されて、挙げ句の果てがこんな仕打ちというのはちょっとひどい。

それでも、「南関東ではこれまで通り撮れる」という事実はせめてもの救いだ。こうなったらもはや、6月1日は府中ではなく大井に行かなくてはなるまい。今の私にすれば、撮れないダービーよりも、撮れるゲンマ賞の方が大事なのだ。

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2008年5月14日 (水)

戸崎騎手”プチ”スランプ脱出

月曜日の大井競馬場。とある牧場関係者が、大井の戸崎圭太騎手について「ただいま絶不調」と評していた。

Anpa栃木県出身の27歳。初騎乗で初勝利という離れ業を演じたデビューからまる10年が過ぎ、昨年はアンパサンドで東京ダービーも制覇。いつの間にか“若手”の領域から抜け出して、今では「ポスト内田博幸」の一番手と評する声もある。ちょっとばかり勝てなくなったところで「不調」の誹りを受けるのは、それだけ視線を集める立場にいることの証だろう。

「不調」という話が出たのは、一昨日付「勝って、そして驚いた」にも書いた月曜の大井最終レースの直前。私たちが応援していたガイナヤツ(牡4)は1番人気に推されてはいたものの、鞍上の戸崎騎手は8日の船橋2Rをナイキチャーミングで勝ったのを最後に、その直前のレースまでいっさい勝っていなかったのである。その間の騎乗回数は24鞍。うち、1~3番人気馬への騎乗回数が過半数の13回と聞けば、「不調」という言葉も自然と重みが増す。

しかし、そのレースで彼は25レースぶりの勝利を飾ることになる。もちろん戸崎騎手とて人間だから、体調や精神状態に一点の曇りの無い日などそうそうあるまい。ましてや競馬。走るのは馬である以上、巡り合わせで勝てないレースがたまたま連続することもあろう。人気を裏切る結果が続いていたのも、「鞍上、戸崎」という要素が人気を押し上げる方向に働いていると思えば仕方のない部分もある。

私個人は戸崎騎手に悪い印象を持っていない。ボンキュッボンに乗って勝ってくれたから良い印象があるのは確かだが、競馬場での彼の所作、礼儀作法を見ていれば、悪い印象を抱けという方が難しい。

こと大井に限れば  神様(的場文男騎手)は別格として  内田博幸騎手が抜けた穴は御神本訓史騎手、坂井英光騎手、そして戸崎騎手の3人が争う構図。だが、南関東4場で見れば、一昨年の南関東リーディングトレーナーの川島正一調教師(船橋)と、昨年のリーディングトレーナー・池田孝調教師(川崎)の双方から依頼を受ける戸崎騎手が一歩リード。川島正一厩舎の馬で、船橋記念(ディープサマー)、ダイオライト記念(フリオーソ)、しらさぎ賞(アストリッド)を、そして池田厩舎の馬では桜花賞(フィリアレギス)を勝っており、既に今年は重賞を4勝。中身も伴っている。

とはいえ、見る人が見ると「戸崎はまだまだ」という意見も多いようだ。このブログへのコメントにもそうした意見を頂いているが、現場でも「追い比べになったら御神本の方が遙かに上」という意見が大勢を占めているし、私もそれは認めるざるを得ない。戸崎騎手は”頭で乗って勝っている”という印象を多分に受けるのも事実。しかし、それでも結果を残しているのだから、決して見劣るものではあるまい。むしろ大きなアドバンテージでもある。

ガイナヤツで一昨日の最終レースを勝った戸崎騎手は、昨日の大井で3勝を挙げると、今日の大井でもきっちり3勝。”プチ”スランプは脱したように思える。

そういえば、「私の知人が彼と遠い親戚説」というのもあったが、その真偽は謎のままだ。最初のうちは「どうやって確認したら良いだろうか?」などと思い悩んだが、最近になって別にどうでもイイやと思うようになった。だって、「私と親戚」ってワケではないんだもの(笑)

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